「いただきます ここは、発酵の楽園」

「いただきます ここは、発酵の楽園」をUPLINK吉祥寺で見てきた。”You are what you eat.”をテーマに、発酵を軸にした生活を送っている人たちを紹介するノンフィクション映画だ。

映画では、オーガニックを取り入れている幼稚園や、有機農業の実践者、研究者たちが登場する。と言っても映像が詩的で美しいので、堅苦しい印象はない。発酵の仕組みなどもかわいらしいアニメーションで描かれ、子どもにもわかりやすい。私が見に行った2月1日も親子連れがけっこう来ていた。

七草摘みをする子どもたち

この映画でとくに印象的なのは登場するたくさんの子どもたちの表情。どの子もすごく生き生きとしている。

映画に登場した幼稚園のひとつ、山梨にあるみいづ幼稚園では、子どもたちが作った野菜を毎日の給食に取り入れている。園では米作りを体験する機会もあって、田植えや稲刈り、脱穀をして、最後は自分たちで炊いて食べる。

年に2回、野草を給食で食べる機会もあって、映画では子どもたちが春の七草を摘んでおかゆにして食べるシーンもある。土と遠く離れた毎日を送る身としては、土と密接につながった彼らの生活がとてもうらやましかった。

有機農業の実践者たち

この映画では、有機農業の実践者も何人か登場する。

その中のひとり、「菌ちゃんファーム」の吉田俊道さんは土壌微生物のことを「菌ちゃん」と呼び、子どもたちにたい肥づくりなどを教えている。

映画に登場したもう一つの幼稚園、マミー幼稚園の子どもたちは、吉田さんの菌ちゃん農法で野菜を栽培し、給食として毎日食べている。この幼稚園では、ほかにも味噌を手作りしたり、卒園のときはお漬物を父兄に渡したりと、発酵と身近な生活を送っている。

子どもたちが菌ちゃんファームを訪れ、畑でニンジンを収穫するシーンがある。土壌は発酵した有機物を多く含んでふかふかで、子どもでも楽に抜ける。そうやって収穫したニンジンを子どもたちはそのままかじる。子どもってニンジン嫌いじゃないの?とびっくりするが、おいしいニンジンなら子どももちゃんと食べるのだ。

大地と内臓はつながっている

近年の研究で、腸内細菌のおよそ9割が土壌微生物由来ということがわかっている。大地と内臓はつながっているともいえる。

有機農業では何よりも土づくりが大切だ。このとき活躍するのが土壌微生物。しっかり発酵した有用な微生物の多い畑では健康な野菜を育てることがでる。さらにこれらの野菜は、腸内細菌を整える働きも強い。

マミー幼稚園では、菌ちゃん農法で育てた野菜を食べるようになってから、子どもたちの風邪やインフルエンザ、お腹の不調などが減ったという。

これを裏付けるのが子どもたちの欠席日数の変化だ。普通の給食のときは年間平均6.4日休んでいたのが菌ちゃん農法の野菜を食べはじめた2006年から減少しはじめ、2014年には0.6日ほどになったのだという。

有機農法で増えるファイトケミカル

有機農法で野菜を育てると、含まれる栄養分も変化する。

植物は虫や病害虫、紫外線から自分の身体を守るため、体内にファイトケミカルという物質を作る。ファイトケミカルは第7の栄養素とも呼ばれ、ポリフェノールやカロテノイドといった抗酸化物質のほか辛みのもとになる含硫化合物などのことをいう。

農薬や化学肥料を使わない有機農法だと、野菜が自分を守るためこれらの成分をたくさん作るようになる。害虫や病原菌は、ファイトケミカルが多い植物を避けるので植物は虫や病原菌を自分の力で撃退することができる。

害虫などにとっては好ましくない物質でも、人間にとってファイトケミカルは健康に良い成分で、有機農法で栽培された野菜を食べるとこのファイトケミカルを多く取り入れられ健康維持に役立てることができるのだという。

有機農法野菜の一番の利点は農薬や化学肥料を使わないことで身体に取り込む化学物質を減らせることだと思っていたけれど、野菜そのものの成分が変わることをこの映画ではじめて知った。

このごろは普通のスーパーでも無農薬、無化学肥料の野菜を売っていることがある。意識して選びたいなと思った。

上映後はトークセッションがあった。私が行った日は杉田かおるさんと監督のオオタヴィンさんが登壇した。途中からは映画にも出ていた長崎大学の山本太郎教授も登壇。

オオタ監督は20年前に自分が大病をした経験から、食について関心を持つようになったのだという。いまではすっかり元気になったと話していた。

杉田さんは2011年から自然農法に関わるようになり、2020年からはユーチューブでも
オーガニックに関する情報発信をしていくという。(杉田かおるのオーガニックリテラシー

また、この映画の前にもう一作、発酵をテーマにした「いただきます みそをつくる子どもたち」という映画もある。機会があったら見に行きたい。

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