「37セカンズ」

脳性麻痺で手足に障がいをもった女性が主人公を演じた映画「37セカンズ」を見た。

主人公のユマは23歳。手足に障害があるものの漫画を描くのが得意で、漫画家である友人のゴーストライターをしている。

ある時、ポルノ漫画の編集部に自分の漫画を持ち込み、女性編集長に人生経験の少なさを指摘されたことをきっかけに、これまでの母と子二人で生きてきた狭い世界から大きく羽ばたこうとする。そんな娘を母親は受け入れられず、束縛を強めていく。耐えられなくなったユマはついにある決断をする。

ユマの行動力は映画を見ているこちらがハラハラするくらい強くて、協力者を巻き込みながら自分の世界をどんどん広げていく。

映画では当然のことながら主人公が障がいによって抱えるいろんな困難を描いているが、それがメインではない。性や親離れ・子離れの葛藤など、障がいを持っていなくても直面するようなテーマが描かれるので、すっかり映画の世界に引き込まれてしまった。

映画の最後の方で、ユマが一緒に旅をしてくれている介護士の男性に自分のことを吐露する場面がある。ユマがひと言ひと言絞り出すように、時々口ごもりながら語る様子をノーカットで映し、こちらの心に直接語りかけてくるような迫力があった。

そのシーンの中で彼女が絞り出すように言ったのが、「私でよかった」という言葉。

生まれてきたとき、たった37秒息が止まっただけで負った障がい。あと1秒早く息ができていたら、障がいもなく普通に生きられたかもしれない。でも…という流れで出てきた言葉だった。

言葉が出るまで、かなりの間があった。ユマを演じていた佳山明さん自身の中でいろんな思いが巻き起こっていたのかもしれない。この言葉を聞いた途端、私は涙が止まらなくなった。

障がいがある、ないにかかわらず、みんないろんなものを背負って生きている。こんな自分じゃなかったらよかったのにと思っている人もたぶん少なくない。

だけど、いいこと悪いことすべてひっくるめて自分を全肯定したところからはじまることって、きっとたくさんある。自分を受け入れた人は、本当に強いと思う。

ちなみに、「37セカンズ」を見に行ったのは2月28日のシネスイッチ銀座。ちょうど安部総理が新型肺炎対策としてイベントの中止や小中高一斉休校の要請を発表した直後のタイミング。上映中止もあるかな?と思っていたけど、今のことろ平常営業のようだ。

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