世の中は元に戻るけれど、私は元には戻らないことにした

上野不忍池のハス

7月に入った。

朝、駅にたどり着いた時、ホームの階段を上る人影が昨日よりあきらかに増えたと感じた。

月が替わるタイミングで出社再開した会社が多かったのだろう。

 

帰りの電車もかなり混雑していた。

電車を降りた乗客で久しぶりにホームが埋め尽くされる光景を見た。

ああ、また日常が戻ってくるんだ、と少し気持ちが暗くなった。

いくらコロナ前の生活には戻ってほしくないと思ったところで、世の中の流れは変えられない。

 

確かに他人は変えられない。でも自分で自分は変えられる。

私は、コロナ前の生活には戻らないことに決めた。

7月末の契約満了をもって、会社を辞めることにした。

一旦はあと1年の契約更新を承諾したものの、撤回させてもらった。

15年ほど暮らした東京も出ることにした。およそ20年ぶりで地元に戻る。

戻るというよりむしろ、新しい生活がはじまると言ってもいい。

20年前とは街の様相も、家族の状況もまるで違うのだから。

もちろん不安はある。けれど悩みの質が変わるだけで、東京で暮らしていてもそれは同じだ。

 

先月、2匹の猫のうち1匹が急逝した。

ここ1年ほど、体調はずっとよくなかったが、まだ数年は生きるだろうと思っていた。

容体が悪くなっても「まさか」と現実をなかなか受け入れられなかった。

昨年、もう1匹の猫が亡くなったときに比べ、事態はあまりにも急だった。

でも亡くなることを受け入れられたら、以前よりは楽に見送ることができた。

「天から預かっていた猫を、お返しするときが来たんだな」

不思議とそう思えて、涙はあまり出なかった。

 

猫が亡くなった翌日に、私は会社をやめて地元へ戻ることを決めていた。

今までも何度か地元に帰ろうと思ったことはあるが、そのたびに私は思い直し、東京に残った。

それが今回はいろんなタイミングが重なり、気がつくとそういう流れになっていた。

もしかしたら亡くなった猫が、私を流れに導いてくれたのかもしれない。

そう思ってしまうほど、あまりに急でタイミングのよすぎる亡くなり方だった。

あの子は、なんとなくそういう子だった。気がよくて優しい、いい子だった。

神様も、早く返して欲しかったのかもな。

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