猫のこと

私は、猫が大好きである。

手放しで何かを「大好き」とはなかなか言えないタイプなのだけど、猫だけは手放しで大好きである。

はじめて生身の猫と接したのは、小学校5年生の冬休み。忘れもしない、お正月のあいさつで訪れた親戚の家でのことだ。私はソファのはじっこに座って大人たちが話しているのをぼーっと聞いていた。すると、その家で飼われていた白地に黒いぶちのある猫が現れ、何を思ったかひょいっと私の膝の上に飛び乗ったのだ。

「!?」びっくりしてかたまる私。それを見て笑う大人たち。その後のことはあまり覚えていない。でも、びっくりしたと同時に、なんだかとても暖かくてやわらかいものにふれたうれしさだけは感覚として残った。父方の親戚は猫を飼っている家が多い。父が子どもの頃も家で猫を飼っていたらしい。猫好きは家系のようである。

その後はずっと猫に片思いしていた。絵を描くのが好きだったので、イラストの中に猫のモチーフを入れたりもした。私の描く猫は細身でどこかミステリアスな雰囲気のものが多かった。実際猫を飼ってからは、そんなイメージはまるっきり幻想だったと思い知る。

お気に入りの猫漫画を繰り返し読んだ時期もある。よく読んでいたのは小林まことの「ホワッツマイケル?」と桜沢エリカの「シッポがともだち」、須藤真澄の「ゆず」。たぶん、自分が猫を飼ったときのことを脳内シミュレーションしていたのだと思う。

2001年に大学に入ると、大学内にたくさん猫がうろついていて、彼らとたわむれるのが日課になった。

ある日、いつものように猫がたむろしているスポットへ行くと、調子の悪そうな子猫がいた。猫は普通、そう簡単にはつかまらないのに、その子はあっさりつかまった。この時点でかなり重症だったのだろう。でもそんな知識もなかったので、一晩様子を見てから翌日病院に連れていった。猫風邪とのことで数日入院させたが、急に容体が悪化してあっけなく死んでしまった。ハチワレの、かわいらしい猫だった。元気になったら飼いたいと思っていたので、すぐに病院へ連れて行かなかったことを悔やんだ。遺体を引き取ったとき、病院で身体を洗ってくれたらしく、くすんでいた白い毛の部分がまっしろになっていて、「こんなにきれいな毛並みだったんだ」とよけい悲しかった。

この出来事で猫が苦手になるかと思いきや、私はますます猫を飼いたいと思うようになっていた。

翌2002年、大学2年生の春。ゴールデンウィークにサークルで山登りをした帰り、サークル会館の部室で仲間とダラダラ過していたとき、「赤ちゃん猫がいる」との情報がもたらされた。

まだ目も開いていないような本当に小さな赤ちゃん猫が3匹、菓子箱に入れられ、サークル会館の隅っこに放置されていた。お母さん猫は学内でよくみかける三毛猫と思われたけれど、赤ちゃん猫のもとにつれていってもシャーシャー言うだけで、完全に育児放棄状態だった。誰かが箱に入れていたとはいえ、ちゃんと世話をされている様子もなく、このまま放っておいらた3匹とも死んでしまうかもしれなかった。

その夜、私はサークル仲間たちが雑魚寝している横に座り込み、一晩寝ずに悩んだ。膝の上には小さな猫3匹の入った菓子箱。猫たちはときどきみゅーみゅー鳴く。飼いたいな。でも飼えるのかな?あんなに飼いたかったのに、いざそのチャンスが巡ってくるとやっぱり怖くなる。

どれかを選ぶということは考えていなかった。ある先輩から、選んでしまったら後悔すると言われ、確かにそうだなと思ったから。飼うなら3きょうだい一緒だった。

明け方、私は猫たちを連れて家に帰ることにした。一晩悩んだけれど、本当は猫たちを見たときから私の心は決まっていたのかもしれない。

その猫たちも今年の春で18歳になる。残念ながら去年1匹亡くなってしまったが、2匹は今日も元気にごはんをねだってくる。やっぱり、私は猫が大好きだ。

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